Old Dancer's BLOG
ここはてりぃが、趣味の共通する方々との得がたいつながりのために、自分の趣味に関係する諸々のことを、壊れながら書きつづるブログです。
   来訪者数: since 2004/12/2...    
「箱の中の欠落」「鏡には映らない」を見返して
 この二つ、絶妙に絡んでませんかっ!!

 …ああ、すいません、昨夜記事にした古典部シリーズの新刊短編集、「いまさら翼といわれても」の、しょっぱなを飾る二編なんですが。

 この本を手にして、読み始める前に、巻末の初出情報を確認しました。すると、発表された時系列、この間に収録された全編にわたって、バラバラなんですよ。一本目の「箱の中の欠落」は文芸カドカワ2016年9月号、続く「鏡には映らない」は野生時代2012年8月号、三本目の「連峰は晴れているか」なんて、野生時代2008年7月号ですよ。なんでこんなことに?

 たまたまそうなっただけだ、或いは、特に計画性無く発表した作品群を作中の時系列に並べたらこうなった、なんていう意見が多いのでしょうか。本当に?そんな簡単なものじゃあないでしょう。少なくとも、前半部三篇を見る限り、私には明確な意図があって並べ直されたようにしか思えません。

 だって、一本目の途中で、奉太郎と里志の、こんな会話があるのです。

奉「前にお前と夜の散歩をした時も、似たような話じゃなかったか」
里「ああ……あれは、中学三年だっけ。懐かしいね」
 
 一本目に書かれている、明示的なヒントは、たったこれだけです。中学三年の時に、彼らにどんな出来事があって、彼らが一体どのように行動したのか、具体的な話は全く出てきません。ただ、奉太郎が言っていることが正しければ、中学三年の時にも里志は自分だけで解決できそうと思って自らの思うところにより行動しかけ、途中で奉太郎に助けを求めるべく、深夜の散歩に誘ったらしいのです。

 続く二本目には、ヒントなんてもっと少ないです。そもそもは、何で奉太郎は中学校の同級生から憎まれるようなことになったのか、って話を、摩耶花視点で追いかけていくだけですから…独立した二本の短編なんだって、私もそう信じて全く疑っていませんでした。

 ところが…二本目の終盤で、一気に状況が変わります。これから読む方のために詳細は伏せますが、この話、先の二人のセリフに出てきた件と繋がっていると考えても、全く破綻しないんですよ!!

 もちろん、「破綻しない」ということのみを以て、この二本がリンクしていると唱えるのは、無理があります、ありすぎます。じゃあ、他の視点ではどうか?この二篇が描いていることは、この短編集の構成上、何らかの意味が持たされているのではないのか?

 そこで重要になってくるのが、続く三本目、「連峰は晴れているか」なのですよ。こちらは、既にアニメでも見ていますし、Blu-ray第9巻の特典についてきた小冊子で読んでもいますので、中身はよぉく知っています。内容の詳細はやはり省きますが、このエピソードでは、「ある出来事を通して、えるが奉太郎の行動の、その動機の一端に触れて、言葉にならない思いを抱く」というものなのです。どうですか?わからない?二本目「鏡には映らない」を同じように総括してみましょうか。こちらは、「過去のある出来事を通して、摩耶花が奉太郎の行動の、その動機の一端に触れて、彼へ抱いていた間違った印象を正す」というものなのです。これが、意図的な並べ替えでなくて何だというのでしょう!!

 一本目は、「里志が、そして奉太郎が、彼らそれぞれの動機に基づいて、何かを正そうとする夜の話」です。そして、二本目のバックボーンとなっている過去の話も、どうやらそういう話なのでしょう。こうして、一本目と二本目が緩く繋がりつつ、二本目と三本目も一定の共通するテーマを扱う形にして、これら三本を「相互に独立した短編集」ではなく、「連作」と称して差し支えないような広がりを持たせているんじゃあないですか!!

 四本目「わたしたちの伝説の一冊」を読んでみないと、この本一冊の全体構成までは見えてきませんが…個人的に愛してやまない五本目の「長い休日」、そして六本目の表題作「いまさら翼といわれても」の内容を反芻するに、やはり連作としての構成に落とし込まれている気がしてなりません。いやぁ、たまりませんなこれは!!

 とりあえず、某密林のとあるレビューコメントに書かれている「番外短編を集めた」という評には、私ぁ全く賛同できませんよ。そんな偶発的なもんじゃあないですよこれは!!米澤さんが意図して編んだ何かがあるのなら!!できればその意図を少しでも感じ取って、存分に悶えたいものであります!!さて今日は…欠落~鏡~連峰くらいまでを再通読して、続く四本目に備えようかなと思います。一気に読むのもいいもんですが、こうしてじっくりと噛み締めるのもまた良し!!深みのある作品ならではの楽しみは、こちらも粋を尽くしたいものです。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
■関連記事~
 絶妙の間合いを楽しませてくれる文が読みたい (2014/01/25)
 雪風を読み進めてみたり。 (2013/04/09)
 島本Gガン3巻読了。 (2011/03/11)
 神奈とか神奈とか神奈とか (2005/07/04)
 Kanon~石原監督スペシャルインタビュー (2006/09/30)
 なのは洋菓子店2巻! (2015/11/13)
 落丁大魔王 (2010/02/03)
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
※コメントについてのポリシーはこちらです。初めての方はご一読下さい。
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
※トラックバックについてのポリシーはこちらです。初めての方はご一読下さい。
http://terry.blog1.fc2.com/tb.php/6167-8e89e424
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック