Old Dancer's BLOG
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planetarian 第4章「酒に酔う」
 周回遅れを重ねてここまで来たレビュー(本当にすいません…)。体力的にはしんどいのですが、せっかくもう少しなので、頑張ります。(汗)

 さて。

 最終回を次週に控えて、屑屋の現在の心境を整理する一連のモチーフでございます。細部を忘れていたため、このレビューを書くためにこの第4章相当部分から、ゲームをリプレイしたのですが…いやぁ、驚きました。「ゆめみの歩行が非常に遅いこと」に関する二人のやり取りや、屑屋のモノローグ、ゆめみのセリフなど、かなりの箇所が細かく削られてはいるものの、全体としては大きな漏れが無いように、実にきれいに拾われています。その結果、サブタイトルにもなっているように屑屋が「酒に酔うシーン」、あるいは「酒に酔っていることを明示的に自覚するシーン」が、相対的に大きな比率を占めるようになり、原典に比べて印象が強化されている感じです。

 「酒に酔う」。ここで言う「酒」は、劇中でも言及されているとおり、ゆめみという存在のことも指しているわけですが、映像的にそれを強化する細やかな仕掛けがいくつも施されています。
 
ゆめみ「本当によく降りますね」
屑屋「…………そうだな」


 ゆめみの大腿部の発熱ゆえに休息している時の会話です。返答するまで無言で、ゆめみの様子を見ている、ほんの数秒間。ここの表情は、ゲームでは表現されません。また、この後の会話で、ゆめみが雨が好きだという理由を屑屋があっさり看破するくだりも、屑屋の表情の柔らかさや、声の演技の優しさに、屑屋の心情が淡く表現されています。

 再出発する際に、移動の邪魔になる例の花束を捨てさせようとするも果たせず、ゆめみに持たせるよりはましということで自分が持つことにした屑屋。この花束は、「ゆめみの気持ち」です。屑屋が、ゆめみの気持ちを受け入れたことの暗喩にもなっていますね。原典にも同様のやり取りがありますが、カットせずにこうして映像化されたのは、やはりそういうことなのでしょう。ビジュアルで表現されるとその意味合いが一層引き立っていると思います。



屑屋「さんざ苦労して、獲物はこれ一本か」


 全壊状態の酒屋の中で、奇跡的に生き残っていた一本の蒸留酒を手にした時の、屑屋のセリフです。ここでは、自嘲気味の屑屋の表情が描かれていますが…これ、そうは言いつつも、本気で怒ったり残念がったりしているわけではなく、「得たもの」については素直に喜んでいますよね?その場で開栓し、口を付けてラッパ飲みしてますし。

 ここ、酒=ゆめみの暗示と思って見ると、色々と深読みができて楽しいです。

 さんざ苦労して手に入れたもの=ゆめみとの出会いであり、しかも表面上は自嘲気味だけど、本心ではまんざらでもない、とか。

 久しぶりに、しかもすきっ腹に入れた蒸留酒ゆえか、いきなりむせてしまう屑屋。これは、幼い日に星を見たことなどとうに忘れていた屑屋が、「ゆめみという存在」を通して星の輝きに触れ、むせたような状態=それまでの平常な状態と変わったことを表している、と読めますし。

 むせた直後に、ゆめみの顔をじっと見て何かを思う屑屋のカットも、すごく味わいがありますね。ここ、文字通り二重の意味で、屑屋が「酒に酔っている」というカットなんですよね。



屑屋「何を願う?」
ゆめみ「天国を…天国を二つに、分けないでください。
   私は、ロボットの神様にそうお願いしたいです」


 この直後の、屑屋が目を見張るカット。そして、そう願う理由をひとしきり聞いた後の、「……そうか」と答える屑屋のどこまでも優しい表情。

 そうして、屑屋は、自分がとっくに酔ってしまっていたことを自覚します。自覚した以上は、その気持ちと向き合わねばなりません。ゆめみをこのまま、この封印都市に置いてはいけない。どうすればいい?答えは…簡単には出ないんですよね。



 一方でこの回では、「ゆめみの視野」や「ゆめみの目のアップ」が何度も拾われています。もちろん、第3章まででもそういうカットはいっぱいあったんですが…今回は「酒に酔った屑屋の思い」がクローズアップされる回です。そこに、「ゆめみがその同じ瞬間に、何を見ているか」という描写を重ねることは、つまり、「ゆめみはこのシーンで何を思っているのか」という視点にフォーカスすることに他なりません。

 屑屋の顔を見ている時は、屑屋の思いを。

 全壊した酒屋を見ている時は、その破壊の爪痕の意味を。

 ゆめみは、実は、わかっているのではないか?ロボットという存在ゆえに、プログラムされたものが全てと思ってしまうけれど、でも、ひょっとしたらゆめみは、プログラムされている以上のことを思い、考え、理解しているのではないか?そんな疑念が浮かびます。だって…「天国を二つに分けないでください」なんていう願い、開発者がプログラムした結果だなんて、どうしたって思えないんですよ…。



 封印都市の外れ、封鎖壁の真ん前に待ち受ける自動砲台、シオマネキ。こいつを排除せねば、外に抜け出ることは叶いません。恐らくはこれまでもそうしてきたように、排除を試みようとする屑屋ですが…今までと事情が違うのは、「苦労して手に入れた」「貴重な酒瓶よりももっと得難い大事な存在」が傍にいて、ここに置いていく選択をしたくない、と屑屋が思っていることなんですよね。

 感情を抑えきれず、熱い言葉をいくつも紡いで、ゆめみに選択を迫る屑屋。「投影機も二度と動かない。全部、お前がその目で見たとおりだ!」というセリフにかぶせて、ここでもゆめみの目のアップを映すのがグッと来ます。屑屋が重ねて言う、「この街にはもう、お前もプラネタリウムも必要ないんだ!」のシーンでは、そのゆめみの目がクッと少しだけ見開かれる描写があって、やっぱりこの子は、プログラムされたもの以上のことがわかっているように思えてしまいます。

 「狩り」に出かける前に、一度受け入れたゆめみの気持ち=花束を、もう一度ゆめみに託していく屑屋。戻ってくるまでに(この後のことを)考えておいてくれ、というセリフとピッタリ符合する暗喩です。屑屋は、自分が入れ込んだロボットを手元に置いておきたい、という意思で動いているわけではないんですよね。「ゆめみを幸せにしてやりたい」のですよ、彼は。だから、ゆめみの気持ちに反することはできないし、ゆめみが自分の判断で未来へ進める選択をしてほしい、と願って一連の言葉を伝えたわけです。



 屑屋などという商売をやめ、ゆめみとともに星を見せて回る商売に鞍替えすることを夢想する屑屋。「……バカバカしい」……その言葉とは裏腹に、屑屋はその夢想にとても満足しているように見えます。それが酒に酔った結果なのだとしても、その夢は醒めていく酒の余韻とともに、消えていくしかないのでしょうか。

 少なくとも、屑屋自身は、そう思ってはいないようです。

屑屋「悪いが、また相棒ができちまったんでな」


 屑屋が思い描く未来は、新しい相棒=ゆめみと一緒に、この街の外へ出ていくことなんですから。これが一時の酔いが見せた夢なのだとしても、そのまま醒めていくに任せたくはないんですね。

 しかし、その思いとは裏腹に、不発(ミスファイヤ)に終わる運命の一発。敵襲を検知したシオマネキが放つ反撃のレールガン!!いやー、ゲームだとここでシオマネキが撃つのは機銃だったんですが、この変更は燃えますね。絵的にも映える映える。この先を考えると、そんな呑気なことは言っていられないのですが…。

 いよいよ、最終回です。心して、制作スタッフの皆様の粋を受け止めたいと思います。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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