Old Dancer's BLOG
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氷菓 第十話「万人の死角」
 泣いた。

 爆涙というわけではなく、うっ、と潤むようなものだったけど、でも泣いたね!いやー、もう素晴らしいとしか!こんな展開になるなんて全然予想していなかったものだから、いい意味で裏切られっぱなしでしたよ!まだこれでクライマックスじゃないんだよね?次回がピークなんだよね?どういうことなのよ一体!

 …て言われても、今話の泣きどころがわからん、というそこの貴方っ!貴方は「自分の存在の理由」や「自分の存在価値」について、思いを巡らしてみたことはないのかっ!自己への言及ですよ不確かな我が身に対する揺らぎと懊悩ですよっ!ない?それは甚だ残念…私ぁもうバリバリに覚えがあるわけですよ!いやね、世の中の平均レベルに比べて優れてる優れてないという単純な話じゃなくてさ!誰だってそうじゃないのかい、自分の持つ等身大の力について、的確に正確に知りたい、認識したいという気持ちを抱く局面が一度や二度は訪れるんじゃないのかい!

 やさしいだけじゃない。 痛い、だけでもない。青春群像劇としての氷菓の提示、今回も存分に味わわせていただきましたっ!
 

~~~


 と、いうわけで。


 まずは、お尻の話から行きますか。


 えっ、いきなりお尻?!そんなサービスシーン、あったか?!…いやいや、そういう「生尻」ではなくてですね…(汗)。今話には、人が座ってるお尻の部分を、アップで撮ってるカットが二か所あるんですよ。

 一つ目は、アバン冒頭部。居住まいが悪そうにしている奉太郎が「何か?」と入須先輩から尋ねられる、その直前のカットです。正座した足をもじもじさせて、すごく座りが悪そうな様子。ああ、慣れないお店に連れてこられて、落ち着かない様子の描写だね。…そう思いますよね、誰でも。私もそう思います。これ一か所だけだったなら。

 ところが後半のBパート。推理の中身を明かすのに、再び入須先輩と奉太郎は古典部の部室で対峙するわけですが…この時、椅子に座る入須先輩のお尻の部分を、アップで撮ってるカットがあるんですよ。スッと卒のない様子で、さりげなく椅子に座る入須先輩。でも、ここでお尻のアップを撮るストーリー上の必然はありません。無くてもいいんですよ、これ。「アバンでの奉太郎のお尻のカットと対照する」というような意図がなければ。

 彼女にとってみれば、古典部の部室は「アウェイ」です。恐らく初めて来るような、居慣れない場所のはず。でも、全く居心地の悪さとか、落ち着かない様子を彼女は見せないんですよね。そのことを、ダメ押しするかのようなカットとして、入須先輩の座るカットは挿入されているんです。彼女は、居慣れない場所にあっても揺らぎなく、大変落ち着き払っているわけですよ。冒頭での奉太郎とは正反対なのです。

 思えば、奉太郎のお尻のカットは、あの京アニのアバンに配置されたカットです。作品の特性やエピソードの方向にもよりますが、時折、いや、しばしばと言ってもいいくらい、言外の何かが込められることの多い、京アニのアバンですよ。やっぱり、この二つの、全く対照的な「お尻のアップ」には、相応の意味合いが込められているんじゃないでしょうか?

 そう。今話は、「自分自身への見積もりに対して迷う奉太郎」の話なんですよね。だから、確固たる自分自身に対して迷うところのない入須先輩との対照で、すごく座りの悪い様子の奉太郎が描かれているんです。


~~~


 Aパートでは、入須先輩から大きく揺さぶりをかけられる奉太郎の様子が描かれています。以前に比べると随分控えめな描写でしたが、入須先輩の言葉を聞いて「薔薇色」に染まりかける奉太郎の視界が秀逸でした。あれは、奉太郎が「自分では思ってもみなかったような色彩」に触れた時の動揺の描写なんですよね。自分に特別な技能が備わっているという、甘美な呼びかけ。膝の上で震える奉太郎の両手が、またいい仕事してますよね。

君は、特別よ。


君は、特別よ。


 大事なことなので二回言いました。いやいや(苦笑)、まあ、大事には違いないんですが、何が大事なのか、が大事です。あれ?(苦笑)

 それは、「ホントのことだから大事」なのではないんですよね。「欺瞞なのではないか?」と、よくよく考えるべき点だから大事なんですよ。本当に奉太郎は特別なのだろうか、それ以外の例えば古典部のメンバー、里志にえるに摩耶花は、凡庸な存在なのだろうか?

 入須先輩から語られた、運動部の補欠の例えがありました。ここで言われている補欠君が、凡人代表、というところでしょう。凡人から見れば特別な才能を持つ人の謙遜など、バカバカしくて見ていられない、とはなかなか辛辣です。そしてこの翌日の、里志との会話のシーンが、まるで補欠の話を裏打ちするような描写になっているのが実に悶えます。「それにしても…うらやましい限りだね…全く」と言いながら奉太郎に背を向ける里志。これはもちろん、特別な力を持つ奉太郎のことを「うらやましい」と言っているわけですが、この一連の流れに二回挿入される、「影と憂いを帯びてそっぽを向いていく里志の顔」は、里志の秘められた本心の描写なのか、それとも奉太郎の心象の反映なのか…。

オレは、特別なのか…?
(中略)
信じて、いいのだろうか…。


 コップの水に映る自分の顔。ゆらゆらと揺れるその様は、今の自分に対する認識の揺らぎそのものです。しかも、それは「本当に映っているわけではない」というのが何とも悩ましいですね。よく見るとそれは映ってなどいなくて…。あると思ったら、ない。どういうことなの。奉太郎は揺らぎ続けるわけです。ここでの奉太郎の描写は「入須先輩…オレは」と言ったところまででぷっつりと切られてしまうわけですが、彼が自分に対してどんな結論を出したのか、見せないままで進行させるこの運びがまたニクイ。

 でも、奉太郎がもし、入須先輩が見せようとした「薔薇色」に、自分自身の才能に酔ってしまうのならば…先行きは決して薔薇色ではないのだと思います。


 「自分に酔ってしまうような者では、決して真実には辿り着けない。」


 前回のレビューの中で、私が考察した内容の一つですが…いやー、たまんねぃっすねぇ。前回は2年生の3人に突き付けられていたこのテーゼが、今回は奉太郎自身について問われている側面があるわけですよ。謎解きが終わって帰り際、野球の打球を見て「ホームラン…」とつぶやいた奉太郎が、自分のことを言っているのでないことを祈るばかりですが…。


~~~


 奉太郎が失念していた「ザイル」の件に触れるのが摩耶花である、というのが何とも象徴的です。彼女もまた、入須先輩がはなから期待などしていなかった側の存在のはず。しかし、彼女は奉太郎の見落としを即座に指摘してきました。動揺のあまり、色彩を失ってモノクロに染まる奉太郎の視界…。

 また、試写会を見たえるが、言いたいことがあるようなのに「後でです…」と言って引っこんでしまう辺りも、如何にも「何かありそう」と思えてたまりません。次週が「愚者のエンドロール」、第八話でえるの象徴とされていた「愚者」に結び付けられているのも、もう一段の真実への道筋をえるが導いていくやに思えてなりませんし。

 EDの映像を見る限り、恐らく二人にとって奉太郎は「Polaris」のような存在です。先を示す道しるべであり、星々の輝きを一層際立たせてくれる得難い一極であり。だけど、奉太郎にとっても、彼女ら二人は「道しるべ」になり得る存在なのではないですかね?

 思えば最初の長編エピソード「氷菓」においても、奉太郎は一人のみであの問題の解決を導き出したわけではありませんでした。細部には古典部の面々や彼の姉など、ヒントや材料になるたくさんのバックアップがあったわけです。そして今回、肝心のところでえるは「二日酔い」で強制的に不在とされ、里志も摩耶花もそれぞれの事情で途中退場を余儀なくされています。あえて奉太郎一人の環境に置いた上で、今回のミスリードを導かせているわけです。

 OPで、自分自身も大きく鮮やかな「空色の波紋」を広げることのできる奉太郎。だけど、それは自分自身が光り輝いているのとは違うはずなんです。他の、固有の輝きや波紋を持つ多くの人間との関わりの中で、奉太郎も輝いたり波打ったりできるのですよね。

 そのことを明確に意識せざるを得ないようなエンディングが、来週は見られるのでしょうか?どこまで、何を描いてくるか、楽しみで仕方がありません。




 あともう一つ、触れておかねばならないことが。以下は先週のレビューの一部ですが…。

触れたくない嫌なもの。この先にないと思いますか?私はあると思うんですよ。だって、今回三人から聞いた話をちょっと合わせて行くだけでも、何かもう、ボロボロじゃないですか。全然一枚岩じゃなくて、各人が自分の思いに任せてやりたいことやってるだけです。その真ん中で重要な役回りを任せられた本郷が苦しんでた様まで目に浮かぶようですもん。


 先週まででプンプンに匂っていたこの辺の要素も、意図的に削られている感じを受けます。本郷の真意にあれだけ拘っていたえるは二日酔いで不在でしたから、致し方ないのかもしれませんが…でも、この削られっぷりは徹底してます。

 今話を「奉太郎の話」に特化することで、本郷の件はすっかり裏側に隠れてしまってるんですよね。私自身、レビューを書くために前回の自分のレビューを読み返してみるまで、このことは意識の表面からすっかり消え失せていました。聞いて回ったわけではないので単なる推測ですが、他の多くの方もそうではないですか?今話を見て「本郷先輩に起こったはずの不憫な出来事はどこへ消えた?」と即座に指摘できた方は、今話ラストの摩耶花に相当する才能をお持ちなんじゃないでしょうか。そのくらい、本郷先輩の境遇に関する部分は、誰の目からも隠れるようなハンドリングがなされています。

 そんな今話に付けられたサブタイトルが、「万人の死角」。出来過ぎでしょう、どう考えても。いやはや、この人たちのモノづくりへ込める情熱と技術には、ホントに頭の下がる思いです。感謝と称賛に溢れつつ、次週のエンディングに期待です。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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テーマ:氷菓 - ジャンル:アニメ・コミック

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