Old Dancer's BLOG
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氷菓 第七話「正体見たり」
 
 素晴らしいッ!!


 そうとは気付かせずに張られる良質のフェイクと、それを覆す際のカタルシスの妙味には、いつもいつも唸らされますなぁ!もうね、今回は完ッ全にやられちゃいましたよ!終盤にかけてすっかり「考察脳」に移行して見ていた私が、瞬間に大きく揺さぶられて「感情脳」に引き戻されてしまって、「ちょっとした救い」のシーンに危うく涙だだ漏れですよ?これを極上と言わずして何を極上と言うのかっ!


 感動に震えつつ、今回のサブタイトルを最確認すると…「正体見たり」。おおおおお、そういうことかッ!!何と美しいッ!!


 優れた短編の中には、こうした高度な「一気通貫ぶり」を示してくるものがあるからたまりませんや。ねぇ。
 
幽霊の 正体見たり 枯れ尾花


 本来のものとは違うもの、あるはずの無いものが見えるのが、「枯れ尾花」です。

 幽霊話がそのメインに据えられている今回の話なのですが…「見える」と思えていたり、人によってはそれが「見えない」ものだったり。そういう仕込みが全編通してあちこちに散りばめられていましたね。

 私が最初にそれを意識したのは、Bパート入って間もなくの、奉太郎のこのセリフです。

うろたえる井原もなかなか珍品だな。
これを逃すとは里志も不運なヤツだ。


 奉太郎には「珍品」扱いされていますが、摩耶花の「正体」は実はこっちの方なんじゃないか?という邪推がつい働いてしまいます。本来のものとは違う「枯れ尾花」は、この珍しい摩耶花の姿なのか、それとも普段の勝気な摩耶花なのか…。答えは何処にも無いんですが、否、答えが無いからこそ、この辺はじわじわと考えさせられるんですね。

 また、里志がこの姿を見られなかった、という辺りにも「見える」「見えない」というフレーズが香っていますよね。Bパート初っ端の、色々な意味で幸せそうな里志の寝顔のアップには吹きましたが、それ故に里志は摩耶花のうろたえぶりを見ていません。また、宿題を見てあげなきゃいけないということで謎解明に参加しなかった摩耶花は、恐らくはこの里志の幸せそうな寝顔を見ずに終わっています(えるは男部屋に訪れていますから、見ているんですよね)。

 珍しい摩耶花のうろたえる姿を見られなかった里志。片や、レア度の高そうな、好きな男子の幸せそうな寝顔を見られなかった摩耶花。誰も、「見たいもの」が必ずしも見られるわけではないんですよね。見えるもの、見えないもの…。



 半ばギャグ的な運びではありますが、温泉に関連した部分でも、見える・見えないというモチーフが登場しています。一つは、奉太郎がのぼせる原因になった、えるの入浴シーン。色っぽいですよねぇ、ここ。洗い髪を大まかに後ろへ束ねて湯に浸かり、上気した顔でこぼれた髪をかきあげる仕草を…。でも、全ては奉太郎の妄想です。「千反田か?」と奉太郎が聞きとがめたあの物音さえ、実際にえるが立てた物音かどうか定かではなく、どんな姿で、仕草で、えるが入浴していたのかも全く不明。あるかどうかもわからないものが、奉太郎には見えているわけです。これ自体がもう「枯れ尾花」ですよね。

 もう一つは、風呂に入る奉太郎の下半身が、神業とも言うべき演出で見事に隠されていました。さすが、フルメタル・パニック?ふもっふの第12話「女神の来日(温泉編)」を送り出したスタッフ陣!といったんは感心しかけましたが…一体誰得だよこれ!どうせならえるのシーンをもっと増やせばいいのにあれっぽっちだし、摩耶花なんて風呂に入ろうという運びさえ見せなかったぞ!温泉回の女性陣露出を待ち望んでいた視聴者に仕掛けられた、スタッフの茶目っ気、ある種のワナじゃないかとも思えますが…これまた、見たいものが見られるわけではない、見たくもないモノ(苦笑)が危うく見えそうになる、という点では、今話のテーマに充分沿っているように思います。見えるもの、見えないもの…。



 本来のものと違うものが見える、というネタ振りは、実はアバンの一番最初になされています。浜名湖の巨大ウナギ「ハッシー」の話?いやいや、それもそうですが、最初のネタ振りはもっと前です。葉っぱに止まっているかに見えたてんとう虫が、すぅっと草むらだけ視界からずれていって、あれっ?と思わされるところですよ。種明かしとしては「てんとう虫はバスの窓に止まっていて、たまたま外の景色の葉っぱと重なって見えていた」というだけなのですが…ここで視聴者には「本来のものとは違うものが見えている」んですよね。視聴者には、です。

 ずっとバスに乗っている奉太郎は、てんとう虫が葉っぱに止まっている、という錯覚はしなかったでしょう。つまり、先の奉太郎の風呂の件だけでなく、視聴者に対して積極的に「本来のものと違う見え方」「見える・見えない」というネタは振られ続けているんですよね。登場人物にとってのものではなく、視聴者に対しての、というところが、後から考えると実にシブイんです。

 何がシブイかってね、上に挙げたものの他にも、視聴者に「本来のものと違う」ように見せておいて後でひっくり返す、って仕掛けが、きちんと仕込まれてることなんですよ…。


~~~


 サブタイトルの「正体見たり」。これは、本来とは違って見えていたものの本当の姿、正体を看破する、ということです。真実を知る、と言い換えてもいいでしょう。

フフフ…。
実はですね…兄弟が欲しかったんです。
姉か弟。
気のおけない相手がいつも側にいるなんて、
素敵だと思いませんか?


 嬉しそうにこう語るえるのことを、奉太郎は「お嬢様は人が良すぎるきらいがある」「夢見過ぎじゃないか?」と分析しています。兄弟なんて、そんなに素敵なもんじゃあない。真実は厳しい、なんてよく言われますが、えるにとっての厳しい真実は「兄弟の間柄の実際」ってことなのでしょうか。

 そうなんですよね。今話で登場する愛らしい善名姉妹は、見るからにすごく仲の良い姉妹という描き方ではなく、何か微妙なところがあるんじゃないか、という含みを持ってあちこちで描写されてるんです。二人並んで表情が描かれる時には、姉の梨絵は元気かつにこやかに、妹の嘉代はおとなしくやや憂いを帯びた雰囲気に、はっきりと描き分けられています。これだけなら、「対照的な二人」というだけで留めることも可能ですが…夕食の時に手がぶつかって味噌汁をこぼしてしまう嘉代とか、自分のものにはしっかり名前を書いて主張している梨絵とか、夜に別行動している姉妹二人とか、イミテーションの帯を付けてる梨絵=偽りの関係の暗示とか、怪しそうなポイントには事欠かないのです。

 そこに来て、兄弟の素敵さを無心に信じているえるという描写のくり返しに、「本来と違うものが見えること」「見えるものと見えないもの」というモチーフが重なってるんですよ。

やっぱりいいですねぇ、姉妹って。


 「実際の姉妹の現実」とは違うものが見えているえる。「本来の善名姉妹の関係」が見えないえる。でも、えるは最後にその「正体」を知ることになって…そういう展開の、ちょっと辛さを突き付けるシリアスな話なのかと思っちゃうじゃないですか。

 そして、その通りの種明かしが、実際に来るんです。

そうなら…………。

あの二人は仲が悪いということになります。
浴衣を貸し借りすることもできない姉妹なんて…。


 夕日が落とす木の影の下に立ち、その光と影とにズタズタに苛まれたような姿で悲しげに呟くえる。それは、決して号泣するような悲しみではないけれど、じくじくと胸が痛む様な、辛く重い感情です。無心に信じていられた幸せな光景が、真実ではないのだと知らされた少女の痛みは、どこで癒されれば良いのか…。

千反田の望む兄弟ってのは、枯れ尾花なのかもな…。


 あああ…辛ぇ…そう思いながら、やや目を伏せ気味に歩く奉太郎の心境そのままに見守っていた私。

 それが!

 足を挫いた嘉代を背負う梨絵の姿を、仲の良さそうな姉妹の姿を見て、全部がくるっと反転して!!


 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


 何てことすんだよオイ!今までの全部、視聴者向けのフェイクか!しかもこの、「ここのために全部を紡いできました」と言わんばかりの極上のカットが!あまりのことで声も出ぬまま姉妹を見る二人も、輝くような顔で奉太郎の方へ振り向くえるも、嬉しそうに目を細めて姉妹の方へ駆け出すえるも、もう全てが素晴らしい!!

ま、枯れ尾花ばかりでもないかもなぁ。


 枯れ尾花じゃないどころか!

 むしろ、視聴者にとっては、「何か微妙なバランスの上にありそう」と思えていた姉妹の関係こそが「枯れ尾花」「本来と違うもの」だったわけですよ。


 その正体、明らかになった真実は…本当に仲の良い姉妹の姿でした。



 すいません、今回も脱帽です…。どうすんですか、短編でもこんなにガツンと来るのやっちゃって!身が持たねぇっすよ、ホント…でも構わずドンドンやっちゃって下さいね。引き続き楽しみにお待ちしています。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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テーマ:氷菓 - ジャンル:アニメ・コミック

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