Old Dancer's BLOG
ここはてりぃが、趣味の共通する方々との得がたいつながりのために、自分の趣味に関係する諸々のことを、壊れながら書きつづるブログです。
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氷菓 第五話「歴史ある古典部の真実」
 温故知新。


 古きを訪ね、新しきを知る。


 何故そうするのかと言えば、それが今の自分に必要なことに他ならないからだ。今も昔も変わらぬものはあるし、知って初めて開かれる新しい扉もある。過去の真実に至る道は、明日の真実へ向かう道かも知れない。


 それが、今を生きる術なのだと言ったら…あなたは笑うだろうか。それとも、涙を流してくれるだろうか。


 いずれにせよ、私は向かうのだ。あなたのために。そして、私自身のために。
 


~~~


 さて。


 今回は参りました…。全然書けないんですもの。お待たせしてしまい、本当に申し訳なく。


 レビューが「書けない」と言うことは割と頻繁にありますが、今回のはその中でも格別。三回繰り返して見ても「何も浮かばない」。サブタイトルの他に5文字ほど書いただけで一切筆が進まないというのは、私が覚えている範囲では過去に例が無いですね。

 私がなかなか書けずにいた理由の大きなものは…おそらく私に、「謎解き要素の部分が前面に見えてしまっていた」ということじゃないかと思います。

 以前にも書いたことがありますが、個人的な好みとして、私は物語の筋書きとしての謎解きの要素は、これぁもう全く求めていないんです。どうでもいいというわけではないんですが…謎が明らかになっていく際にカタルシスを感じるポイントが、どうやら平均的な日本人の感覚とはちょっとずれているようなんですな。明らかになる謎そのものの意外性よりも、謎を明らかにするにあたっての描写や過程、演出の妙を通して「浮かび上がるもの」の方に強く心を惹かれるものですから。

 そして今話は、疲れた私の目には最初、謎解きメインの話として映ってしまいました。ようやく明らかになる「古典部の歴史の真実」でしたが…昨日の段階では文字通り、「奉太郎たちが関谷純の正しい過去に辿り着く話」としか考えられなかったんです。ああ、これはオレが書けることなんて、無いんじゃないか、と。流れのままに受け取っておしまいでいいんじゃないか、と。

 しかし、致し方なくもう一回睡眠を取って、意識をリセットしてから少しずつ思い始めたことは…本当にこれは、「関谷純」の話なのか?アバンであれだけ奉太郎に語らせておいて?いや、そんなはずはない、これは奉太郎の物語のはずだ。第一話の初っ端から先週まで、奉太郎のことを示しながら物語は紡がれてきたじゃないか。これが関谷純の話じゃなく、奉太郎の話だとしたら、それを示すパーツは、いったい今話のどこに配置されている?


~~~


 Aパート半ば。


 奉太郎に呼び出された古典部のメンバーのシーン。この時、部屋に入った摩耶花が床にカバンを置く瞬間が、あえて視点を変えたカットを起こしてアップで描写されていました。

 最初に見た時にも、すごく引っかかったんです。なんだ、これ?あえて作画しなきゃならんカットなのか?必要ないと思うんですよね、普通なら。部屋に入っていく二人を後ろからなめつつ、里志に続いて摩耶花にもカバンを降ろさせればおしまいなんだもの。でも、京アニは別カットを起こしているんです。「ここ、カバンを降ろさせることには意味がありますよ」と言わんばかりに。

 よく見るとこの場面、先に部屋に来ていたえるも、摩耶花と一緒に来た里志も、カバンは皆床に置いているんですね。しかしこの後、最後に入ってきた奉太郎だけは、カバンを真っ直ぐテーブルの上に持っていきます。他の3人は、カバンを床に置く=カバンに用がない。しかし奉太郎だけは、カバンに用があって。その中から今日の話題の素材を取り出して話を続け、それをしまってすぐにまたカバンを手に取り、図書室へ向かおうとします。一度も床に置かずに。カバンを一度も用済みにせずに。

 「俎上」。まな板の上。これはそういうことでしょう。奉太郎にとっては、大事なことがまだ残っていて、それを俎上に載せたままにしているわけです。他の3人は、それを取り立てて必要とはしていない。しかし奉太郎にはそれがとても大事である、と。その違いを強調するためにこそ、摩耶花がカバンを床に置くカットは挿入されたんです。

 じゃあ、その「奉太郎にとって大事なこと」って何だろう?

 一見それは、「関谷純のこと」のように思えます。他の3人にとっては、前日の議論で済んでしまったことだ、と。でも、それだと一点、通らないものがあります。えるですよ。「まだ知らなければいけないことがある」と自覚しているえるには、「関谷純に関するまだ解けていない疑問」があるんです。彼女にとって、その問題はまだ俎上にあるはずなんですよ。

 関谷純の件が「大事な俎上の案件」であるのならば、奉太郎とえる、二人がカバンをテーブルの上に置いていなければ辻褄が合いません。

 つまり、奉太郎は「関谷純のこと」よりももっと大事な何かを、ただ一人俎上に載せている、ということになるんです。




 ここに繋がるものは、アバンの会話で明快に見て取れます。


 そう、奉太郎の自分語りですよ。


いい加減、灰色にも飽きたからなぁ。


 それまでの自己の否定、と受け取れなくもない言葉です。否定までではないとしても、これまでの奉太郎だったら口にしなかった言葉には違いないでしょう。えると会って以来、ある種の揺さぶりを受けてきた奉太郎の微妙な心境が、ここの会話からは見えてくるんです。

 続く言葉で、その内容は更にはっきりします。

でもなぁ。隣の芝生は青く見えるもんだ。
お前らを見てるとたまに落ち着かなくなる。
俺は落ち着きたい。
だが…それでも俺は…何も面白いとは思えない…。
だから、せめてその…なんだ…
推理でもして、一枚噛みたかったのさ。
お前らのやり方にな。


 止む雨。動いていく黒雲。射してくる光。飛んでいくカラス。

 どれも象徴的ですよね。ストレートに解釈すれば、「これまでの問題=雨は去り、暗雲も動いていって、この先は明るい未来が来る。カラス=モノトーン(灰色)に象徴される奉太郎は、光の方角へ向かって飛び立っていく」という風にも読めます。

 いや、でもこれが。実に渋いんですよ、ここ。そう思わせるようなパーツがいっぱいあるくせに、すごくミスリード含みなんです。この直後、語り過ぎたことの照れに耐え切れず「何か言えよ!」と促した奉太郎に、里志は「奉太郎は…薔薇色が羨ましかったのかい?」と問いかけるのですが…何で影の下で語らせてるんでしょう?ショッキングピンクなんでしょ、里志は。里志を象徴するのは影じゃない、少なくとも光の側に属する何かのはず。なのに、わざわざ影を里志にかぶせて語らせるなんて…。

 この言葉、表面的には里志から投げかけられた言葉ですが、本当は「違う誰かからの言葉」という含みがあるんじゃないですか。例えば、「これまでの、灰色であることを自認してきた奉太郎自身」とか。

 奉太郎と里志との会話でありながら、実は根底に流れているのは「奉太郎自身の自問自答」ってことなんじゃないでしょうか。

…かもな。


 里志の、いや、ひょっとしたら自分自身の問いかけに対して、奉太郎は否定はしませんが、明確な肯定もしません。揺れてるんですよ、彼。自分は薔薇色になりたいのか、或いは灰色じゃない何かになりたいのか。そんな彼が自転車を漕いでいく先は、光射す道の先に、また影が残っていて…。



 この「葛藤」なんですよね、他の3人には無い、奉太郎だけが抱えている問題は。「薔薇色」への揺さぶり、「灰色」たる自分への疑問。Aパートに入ってからも、「あんな風(関谷純のような英雄)にオレはなりたいのか?」「そもそも薔薇色とは何だ…」と自問し続けているとおりです。いずれもよくわからないままに、彼は自問し続けます。

 そこに、姉からの電話、今一度の「関谷純の真実」に迫る契機。それは同時に、「薔薇色」と「自分の灰色」に迫る契機でもあります。

高校生活と言えば薔薇色だ。
だがその高校生活を途中で打ち切ってしまう程の、強烈な薔薇色は…
それでも薔薇色と呼べるのだろうか。


 ここで、奉太郎の眼がアップになるんですが…すごく揺れてるんですよね。彼自身の、薔薇色への意識が揺れ動いていることを激しく表すかのように。そして、

関谷純の高校生活は、本当に薔薇色だったのか?
………………………。
突き止めてやる。


 前を見つめる、揺るぎない眼。彼は決意するわけですよ。関谷純の真実に肉薄せんことを、関谷純の高校生活が薔薇色だったのかどうかを確かめんことを。そしてそれは同時に、「自分自身にとっても、高校生活は薔薇色でなければならないのか」という問いに対して、間接的に迫る行為にもなるわけです。

 45年前に、薔薇色でない高校生活を余儀なくされたかもしれない男がいた。

 そして今、薔薇色でなければ高校生活を送れないのかどうか、揺らぎを生じている自分がいる。

 「関谷純の真実」に迫ることは、奉太郎にとっては「自分自身の真実」に繋がり得る糸口なわけですよ。

やけに張り切ってるじゃない。


 誰にも聞こえなくなってから「…まぁな。」とつぶやく奉太郎。そりゃあ張り切るよ。単純に「気になる女子生徒=えるの問題を解決するためだから」じゃないんだよね、よくわからない自分自身のことについて、少しだけ近づけるかもしれないからなんだよ。




 そのように読み解いてから、糸魚川先生から一通りの話を聞いた後に、誰もピンと来ていなかった「氷菓」の意味を語る奉太郎のシーンを見ると…泣けるんだこれが。

本当にわかってないのか?
誰も受け取れなかったというのか?
あの、くだらないメッセージを!


 尋常じゃない反応。これは、もう、自分自身のこととして奉太郎が反応しているってことなんですよ。

 灰色の道を余儀なくされ、でもそのことを決して表には出さなかった関谷純が残した「私は叫ぶ」というメッセージ。それは、灰色であり続けることに揺らぎを生じ、薔薇色との間で迷っている奉太郎自身が発してもいい「私は叫ぶ」というメッセージでもあるんです。だから、「くだらないメッセージ」と呼んだんですよね。関谷純を貶めたのではなく、自嘲してそう呼んでるんです。

 表立っては叫べないけれども、叫びたいという気持ちを抱えていることを誰かにわかって欲しくて、こうして残したメッセージ。それを、誰もわかってない、誰も受け取れないだなんて…。そりゃ、声を荒げることもあろう、苛ついて足も揺すろうというもんです。それこそ、「生きたまま死ぬ」ということですもの…。


 しかし…意味を理解したえるは、これでちゃんとおじを送れると、涙を流してくれるんですね。


 それは取りも直さず、奉太郎への救いになる涙でもあります。


 今の自分、そのままの自分。


 10年経とうと、自分で時効になどせず。


 45年経とうと、誰かが読み取ってくれて。


 よくわからないと言うえると、オレも同じだと言う奉太郎の頭上に、美しい空が広がります。それは、薔薇色ではないけれど、灰色でもない、ただそのままの「今」の色で。まるで、この二人へのつかの間の救いをもたらすかのように。


まあ、自分のこのスタイルも悪くないと思うようになった。
あ、いや、あくまで相対的な話だが。



 相対的な話でもいいんだよ。だって奉太郎は奉太郎なんだから。


 薔薇色かどうかは、一人ひとりの色の話じゃないんだろうからさ。引き続き動いていくであろう彼らの関係性と、そのうねりの中で薔薇色に輝いていくであろう世界に、幸あれ。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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テーマ:氷菓 - ジャンル:アニメ・コミック

コメント
この記事へのコメント
千反田邸からの帰りは揺れる奉太を描いている。確かにそうなんですけどね、―
光の下の奉太と影の下の里志の対比、既読組としては映像を使ってああいう風に表現してくるのがさすが京アニと思いました。

これからも楽しみです。
2012/05/29(火) 08:08:20 | URL | あるかさ #9WAugNKs[ 編集]
十話見ると趣深いですね
>あるかささん

>光の下の奉太と影の下の里志の対比、
>既読組としては映像を使ってああいう風に
>表現してくるのがさすが京アニと思いました。

あーあー、十話でのあの里志の影のある表情を見ると、なるほどなぁと思わされますね。

ホント、京アニさんの仕事はこれだから気が抜けませんw
2012/07/14(土) 23:25:33 | URL | てりぃ #-[ 編集]
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