Old Dancer's BLOG
ここはてりぃが、趣味の共通する方々との得がたいつながりのために、自分の趣味に関係する諸々のことを、壊れながら書きつづるブログです。
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Kanon 特別篇「風花」
 正直なところを言えば。東映版と京アニ版、どっちのKanonが好きかと言われれば、それは一切迷うことなく京アニ版と即答するでしょう。もうどっちが好きとかのレベルじゃないんですもん。私にとっては一つの聖典であり、完成された美学の大成であり、得難い想いと懐かしい日々を凝縮したタイムカプセルそのものなんですから。

 ですが…それだけのものを、今日この日まで待ち望んできたものを、今はいったん脇に置いてでも、してしまわなければいけないことが自分にはある。そのように思わせてくれたのが、東映版Kanonの最後を飾る特別篇「風花」でした。

 数年前にゲットしながらも、一連のレビューを終えるまで封印し続け、ようやく昨夜初めて鑑賞したこのエピソードは…これまで私が持っていた東映版の印象を、根こそぎひっくり返してしまいました。感謝とともに、東映版Kanonのラストエピソードのレビュー、行かせて頂きます。
 
 さて。そのように言っておいてナンですが。

 まず最初に、「風花」本編の出来とは全く関係のない愚痴を終わらせてしまいましょう。この非売品DVD、その当時真っ当に入手するためにはとんでもない条件をクリアする必要があったいわくつきのモノなんですよね。東映版のDVD全巻、東映版サントラ&MAXI全部を入手した上で、東映版アニメとは直接関係のないKanon関連商品「公認アンソロジードラマCD」5枚のうちの4枚を買って、それらに付いているポイントに実費相当額1000円を送ってようやくもらえる、と言うね…。

 金額は…定価で6万円を超えます。2割引きとか駆使して、やっと4万円台かぁ…いやまあ、京アニ版Blu-ray BOXと同等の金額、と思えば、そんなものかもしれませんが…やっぱり納得いかないんですよ。実はこの非売品DVD・風花の他に、別途DVD全巻相当のポイントと700円を送って応募できる「非売品ドラマCD」というのもあったんですが…これはどう考えても、非売品DVDも非売品CDも欲しいというコアなファンはオタク買い(同一商品をだぶらせて買う)しなければいけない、という仕様なんですね。ここまで来ると、さすがにやっぱ、ひどいよね?

 さすがに7年も経つと、状況は変わってくるものでして…今や高値覚悟のオークションに頼らなくても、中古ネットショップを探せば単品で3,780円とかで売られてたりしますし、セットで買い求めるならもっと割安に、何とDVD全巻BOX付き風花付き+更に初回版サントラ2本もついて総額5,990円とかで手に入ったりもします…。つかね、何だろうね、この価格の暴落っぷりは。正確に覚えてないけどオレ、いくら安く入手したとは言っても、この倍ぐらいはかかってるはずだよ?(涙)



 「いいじゃん、そんな、7年も前のことを愚痴愚痴と」。そう言われれば確かにそうなのですが、この「風花」、所詮はコアなファン向けの限定品と言って諦めるには、心底勿体ないんです。東映版Kanon本編を補完するような、とても重要な内容だったりするのですから。それが、入手できる人の極々限られる手法でしか頒布されておらず、しかも2004年に編まれた東映版DVD BOXにさえ未収録となると、これはもう「……残念!」で済まされないような気がするんですよ。


 とりわけ。第13話で名雪が見せるべき変化に、何かもう一押しが欲しかったような人にとっては。


~~~


 最初見始めた時には、「これは後日譚だろう」と思いました。第13話よりかなり後の、キャラクターそれぞれの「今」を切り出して見せる、ファンサービス的な何かなのだろう、と。冒頭が「留学先から届いた佐祐里さんからのエアメール」なので、ますますそういう気持ちで見ていたんです。

 でも、違うんですね、これ。この「風花」は、第13話のラストシーンの、別な側面…復活したあゆを祐一が迎えに行き、手をつないで駆け出す「あの日」の出来事を、全キャラクターをさらいながら個々に描き出したものなんです。第13話ラストでは、ほとんど語られなかった各キャラクターの「到達点」が、そこでは色々に語られるんですね。

 あゆに関しては、補完される点はさほど多くありません。祐一との待ち合わせの前、切りすぎた髪をしきりに気にし、途中でたまたま栞と会って、いくつかの会話を交わすだけです。でも、その他のキャラクターについては、相応に見どころと言いますか、大きなポイントが存在するように思えました。

 舞と佐祐里については、異国の地で支え合いながら新しい生活を始めようとする二人の様子が、少しですが見られます。お互いを気遣うちょっとした色々が微笑ましいですし、見る人によっては百合視点的な楽しみ方もあるんでしょうかね。描写にかけられた時間は決して多くは無いのですが、この二人らしい新生活の雰囲気は、ちゃんと味わうことができます。

 栞は、先に挙げたあゆとの会話の後、約束していた友だちが迎えに来て、恐らくはウィンドウショッピングでしょうか、二人で商店街に出ていく姿が見られます。あの栞が…まる一年ほとんど授業に出られず、友だちなんて願っても無理だったあの栞が、今は普通に友だちも出来て、普通の女の子として生活できている…そういう描写ですよね。

 他にも、秋子さんは何の後遺症もなく普通に買い物に歩けています。あの事故の傷跡が、とりあえずは何も負の影響を残さなかったことがはっきりして、安堵できる部分ですね。また、香織と北川は…何と半分以上付き合っているような、「香織が認めたがっていないだけ」の、事実上の公認カップルになっていました。えー、同人とかではない一般メディア上に描かれたもので、ここまで到達してたのってあったかしら?私にはあんまりそういう記憶がないですが…まあ、それほどたくさんのKanon派生商品を追ってはいないですから、私が知らないだけで存在するのかも知れませんね。

 どれも、ふんわかして、なかなか微笑ましいシーンが続きます。ファンサービスっぽく見ても差し支えないですが、ちょっとした幸せと意味の込められた、そんなシーンの数々…。


 でも。


 名雪、そして真琴と美汐に関する描写は、私が事前には全く想像さえできないものでした。


~~~


 名雪はこの「風花」の中では、「あの暗い表情の日々は何だったのか」と思ってしまうほど、屈託なく笑っています。祐一と話す際も、わだかまりは全く無し。確かに、「私は大丈夫」「(キスも)これが最初で最後」と言っていましたから、有言実行ではあるんですが…そこまでちゃんと、気持ちを切り替えられるものだろうか、と思ってしまうんですね。だって、そうじゃありません?私は、あれだけ心を痛める描写がなされてきた東映版後半の名雪が、一体いつこの名雪に変わったのか理解し切れずに、最初はそのあまりの豹変ぶりに戸惑うばかりだったのです。

 しかし…中盤で、祐一と名雪が会話するブランコのシーンで、一気にこれまでの謎が氷解しました。


 やっぱり、名雪は、あの第13話を経て、ちゃんと強くなっていたんです。


 その理由が、名雪自身の口から、さりげない言葉でちゃんと語られるんですよ。子どもの頃によく漕いでいたブランコが、久しぶりに乗ってみたらうまく漕げなくなっていた、それは、自分が、自分たちが「大きくなったからだ」「大人になったからだ」と、彼女は言うんです。大人に…。


 ああっ?!


 思い出しました!思い出しましたよ!原作のKanonにおける名雪シナリオでは、祐一と恋仲になってごにょごにょするんですが、その行為には彼女が大人の階段を一歩上り、母の庇護を必要とする「子ども」から「大人」へと成長したという含意があるのですよ!だから…祐一の言葉に後押しされて、母がいなくとも一人の大人として祐一と支え合って行こうと、彼女は暗闇から出て祐一の元へ向かうんです。原作における名雪の、問題解決のキーは、「大人への成長」。よくわからんという人は、以前にこんな記事中でそれに触れた文章も書いてたりしますので、参考にしていただければと…。


 そして、です。


 東映版第13話の、あの唐突な感じさえしてしまう「一回きりのキス」は、名雪が大人になるために必要な行為だった、ってことじゃないですか!!


 なんてこった!全然見た目が違うから気付けなかったけど、これってちゃんと原作の重要ポイントを読み変えたシーンになってるってことじゃないか!ごにょごにょの代わりにキスを持ってきてるんだよ、「大人への階段を上る契機」として配置してるんだよ!アレはひょっとして未練のキスなんじゃないかとか、結局アレでもふっ切ることができずに泥沼化するんじゃないかとか、行く末はのこぎったりトマトったりというKanonに似つかわしくない展開が待ち受けてるんじゃないかとか、そんな心配、全部全部ぜえええええんぶ無用だったんだねえええええええ!!

 これが考えすぎだと思う方は、この「風花」中に存在する、もう一つのカットを見て頂きたい!祐一との会話の最中、「雪、もうなくなっちゃったね」と告げる直前の名雪を!彼女、何故だか、ブランコの柵に滑らせた自分の指を、いったん自分の口元に持って行って、目を閉じて何かを考えてるんですよ!一回目見た時は何だかわかんなかったけど、今なら確信を持って言える!あの一回きりのキスを、それを通じて一歩大人へと進んだ自分を、その契機をくれた祐一への感謝を、彼女は想っているのではないでしょうかっ!!

 そして、極め付きの言葉が、僕らナユキストを襲います。

寄り道するのがいい時だって、あるんだよ!


 何と!!全肯定、ですよ!!祐一のことを好きになって、でも祐一には見てもらえなくて、あゆに心寄せる祐一に悩んで苦しんで…その辛く苦しい日々を「寄り道」として正しく向き合った上で、それが自分にとって「いいこと」だったと!自分の成長の過程にとって、必要なことだったのだと!そのように彼女は肯定して見せたのです!!


 道中では弱くなってしまう時もあったかもしれないけれど、東映版の名雪さんもやはり名雪さんだったのではないですか!!



 うがはああああああああああああああああああああああああああああああ!!!



 他のエピソードではほぼ一切「ほろっ」と来なかった私が、今回ばかりはさすがに来たあああああ!!


~~~


 もう何度も来ているような口ぶりでその日もものみの丘を訪れ、「あの子たち」が今もそこにいるかのように一人語りしていた美汐の前に、まさかの真琴が姿を現します。

 それを嬉しさと同時に、「Kanonのという作品中で、真琴の復活をこんなに正面切って描いていいものか」、と迷いながら見ていた私でしたが…それは杞憂でした。終盤ではこの真琴、輪郭に光をまとっている姿で描かれているんですね。ああ、これは、愚直にすぎるような単なる真琴復活の描写じゃない、これ自体が束の間の奇跡として描かれているんだ…そうわかった時、何とも言えぬ温かな気持ちが胸中に広がりました。

 でも、未だこの真琴が刹那の姿だとは気付かない美汐は、今度は祐一も誘いましょうかと真琴に話すのですが…真琴はかぶりを振って、言います。

祐一には、いつでも会えるから。

今でも感じるよ?祐一のこと。


 ものみの丘に。そしてこの世界のどこかに。真琴の存在は、いつでも祐一のことを感じられるように、在る。そういうことですよね、これは。見えないかもしれないけれど、祐一を、皆のことを、ちゃんと見ている、感じている…。


 そ……。


 それは、まさか?!


 美汐の「あの子」も、美汐には見えないけれども、ものみの丘に、この世界のどこかに、今もちゃんとあって、……きっと、美汐のことを見ているって、そういうことなのではないですかっ?!



 何と言う救いかっ!!!



 せかんどいんぱくとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!



 しかも!しかもそのまま、何かを感じ取るように目を閉じた真琴が、こんな、そのシーンのセリフからは直接つながらない、聞き覚えのある一言をっ!!

………

ホントは優しいくせにね!



 第13話ラストとの完璧なリンク来ちゃったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!



 美汐にお礼を言って、ふっと消えてしまう真琴。その後には、飛んでいくたんぽぽの綿毛が舞って…それが木々の向こうの遠くにまで広がったかのように、空に白い小さな光る欠片が広がって舞います。



 強さを秘めて明るく今を生きる母子の元に。


 一人で消えゆくかと思われた悲しい時を乗り越えた少女の元に。


 友たちと助け合う中で育んださりげない好意を共有する恋人たちの元に。


 異国の地で友情を交わしながら新たな生活への歩みを踏み出す少女たちの元に。


 そして。


 悲しみと忘却に彩られた長い時を潜り抜け、それでもと願った奇跡を経て、失われた時間を取り戻そうとする二人の元に。


 光が舞います。それは形を変えながらこの世界に満ち満ちて、人々の願いにつながって行くのでしょう。


 季節外れの、白い欠片たち。奇跡、と言う名の、風花が。






 このエピソードが見られて、本当に幸運だったと思います。本編とは異なる16:9の画面構成で気合を入れて作られていることや、最後にフルサイズVerが流れる本作のED曲の名前「frower」までもが「風花」と響き合っているような粋が、更に私を酔わせてくれました。7年越しの鑑賞に、今ようやく「真の幕引き」ができたような、そんな心地です。この作品の制作に携わった全ての人たちへの、感謝とともに筆を置きましょう。心からの、「ありがとう」を。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
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コメント
この記事へのコメント
東映版kanonのレビュー、大変楽しませて頂きました^^
自分も一度一巻だけレンタルしたことがあったのですが、京アニ版とのギャップに視聴できていませんでした。
しかし、また見てみようかと思います。

ただ、特別編はどうしましょう・・・
2009/12/18(金) 00:59:51 | URL | あるかさ #9WAugNKs[ 編集]
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2009/12/19(土) 21:25:00 | 丈・獅子丸の咆哮 (新館)