FC2ブログ
Old Dancer's BLOG
ここはてりぃが、趣味の共通する方々との得がたいつながりのために、自分の趣味に関係する諸々のことを、壊れながら書きつづるブログです。
   来訪者数: since 2004/12/2...    
電脳コイル 最終回「ヤサコとイサコ」
 全くもって、うかつでした。自分で「デンスケはまだどこかにいるんじゃないか?作品の中で、デンスケが果たすべき役割はまだ残っているんじゃないか?」と別な記事で書いておきながら、第25話でコイルスドメイン崩壊からヤサコを導いた、あの鈴の音の主がデンスケであるという可能性に、全く思い至らなかったとは!アホか、オレは。

 あのピンチの場面でヤサコを呼んだ、鈴の音。おじじが腕につけていた数珠のものと同じあの鈴の音は、「死してなおヤサコを守るもの」の音です。「ヤサコのボディーガード」を託されていたデンスケもまた、真っ黒なイリーガルになってさえ、ヤサコを守る役目を果たし続けていたのですね…。


 「わうっ!」


 ででででデンスケェ~~~!!(涙)
 
 最初の出会いと同じように、手を伸べるヤサコからしり込みしてしまうデンスケ。しかし、おずおずと近づき、ペロッと手をなめ、抱かれてしっぽを振って…思いを通わすということは、一方通行の「都合のいいもの」ではなくて、ちょっとずつ距離を縮めていくことで得られるものですが…第一話で既に示されていたそのモチーフを今一度こうして示しつつ、「これは間違いなくデンスケだ」という確信を高める手段としても用いてくるとは…もう、この時点でさえ色々と虚を突かれまくりです。

 あったかいデンスケ。ふさふさの毛並みのデンスケ。「見た目」は黒い姿になっているけれど、それは間違いなくデンスケです。目に見えるもの「だけ」が本当のものなのではない。第24話で投げかけられた問いへの、明確な答えですよね、これ。また、もう死んでしまっているおじじとの再会が、おじじと幼いヤサコに心からの笑みをもたらしたこともまた、「本当のものってナンなのか」という問いへの答えを導いてくれる気がします。


 「さよならが…言えたよ…」


 死と別れが、避けられないものなのだとしても、残された人の思いにもちゃんと行き場があるってことですよねぇ、これ…。ありがとうが言えたこと。さよならが言えたこと。それだけで、人の思いは戻ってこれるんだって。この言葉を聞くハラケン自身もカンナに謝罪が出来たことで救われてますから、二重の感動です。ああ、たまんねぇ…。

~~~

 この最終回放映から早一週間が過ぎ(こんなに放置するつもりは無かったのですが…)、しかし何度も見返す度に、新たなモチーフが浮かび上がってきて、とても全てを掘り返せる気がしません。懐も深ければ、中に込められたものもまた膨大にあって…。きっとこの作品は、「惚れ込んでくれた人が何度も何度も良き物を持ち帰れるように」と願って作られたのでしょう。メインのターゲットであろう六年生前後の子どもたちが、彼らの成長とともに「痛み」「辛さ」と出会った時に、この作品に刻まれたものの意味を一つ一つ拾うことで救いや道しるべを得て、次へと進んでいけるような…そういう「エール」のようなものを、25分の枠からはみ出しそうな展開からひしひしと感じるんです。

 だから、きっと全てを一度で理解しなくてもいいのだろうと思います。一番大事な部分さえ、見誤らずに受け取っていれば。それはきっと、「痛みを感じる方向に未来がある」という、シリーズ後半で何度も繰り返されたテーゼなんでしょうね。私自身も、謎解きの部分に関しては既に一部を別な記事に整理しました(色々と穴も多いですが)ので、この記事の残りでは「痛み」に要点を絞ってレビューすることにします。





 「ミチコさん」という名前の中に「道」の音が含まれていることは、結構前から気になっていたんです。でも、EDの中で歌われる「道は続いてく、繋がっている」という歌詞とはあまりイメージが合わず、むしろ向いている方向は正反対。うーん、たまたまかなぁ、無関係なのかなぁ、と、触れることを半ば諦めていたんですが。

 ミチコさんの正体がわかって、今回の描写を何度か見直しているうちに、あっと思いました。やっぱり「道」で合ってるんじゃないか?イサコ自身の、ただしあまり好ましくない「もう一つの道」ということで。

 痛みを感じない子どもの世界でずっと兄と一緒に暮らしたいという「イサコの気持ち」を、「ヤサコのキス」への嫉妬が後押しして生まれてしまったミチコさんは、言ってみればイサコのオルタナティブです(この傍証として、明らかにイサコとは異なる幼い姿のミチコさんが「お兄ちゃんと別れたくない」と言うシーンや「私はあなたの分身(もしくは本心)」と言うシーンもがありました)。つまりミチコが導き入れようとしていた世界は、そっちに繋がったままになったかもしれないイサコ自身の道、可能性の一つなんですよね。ただし、その道の先は、外とは繋がらない、閉塞した未来です。それでいいはずがありません。

 リンクが戻りかけた時に「辛そうな表情」になっていたイサコでしたが、本気ミチコに呼び戻されようとする時には全く逆の、かつて無いほど幸せそうな表情を見せていました。自分だけの心地よい空間に向かう喜び、閉塞していく快感。傍から見ていて思わずゾッとしてしまうような、この作品の主題を逆から見せる瞬間です。その、気持ちよい方向には、未来は無い、という。

~~~

 ミチコさんをイサコのオルタナティブだと思って見ると、あの空間でのせめぎあいは、イサコ本人の中で行われている「葛藤」と同義になります。あの、コイルドメインによく似た空間へのリンクが、実は内部へのリンクだったということともキレイに繋がってくるんですね。

 「内部」へと引きこもっていく気持ちのよい道、「外」と繋がっていく痛みを伴う道。その選択を迫られて、揺れ動くイサコの電脳体、イサコの気持ち。これが、変質したイサコの治療空間の表すものなのでしょう。これは…誰もが通ってくる成長の過程なんです。そして、内部への道の誘惑は、とてもとても強い。「他に、何にもいらない」と思ってしまうほどに。

 しかし、そのイサコの内部へと、強い口調で叱咤を浴びせるヤサコ。…ああ、これが本当の「優しさ」なんだな、と思いました。決して口先だけ合わせる様なやり方では得られない、ヤサコ自身が見せた「本当の優しさ」。それに応え、誘惑を振り切って帰ってくるイサコも、表面的なキツさの先には得られない、「本当の勇ましさ」を見せていて。二人の名前が、同じ道に対峙するこの瞬間こそが、「ヤサコとイサコ」。真実の優しさと勇ましさが、どこかで繋がっていることを示す、恐らくこの作品のテーマに結びつくシーンなのだと思います。

 それは、私のように歳を取ったものには、ちょっぴり恥ずかしいものでした。もう過ぎてきてしまった道ですし、正直なところ、自分自身にとっては今更なところもあって。

 でも、我が家の小六の長男に視聴後の感想を聞いたとき、ああ、やっぱりこれでいいんだ、と確信しました。


て「どうだった」

子「すんごく面白かった!」

て「そうか…難しいとことか、
  わかりにくいとことか無かったか?」

子「全然!バッチリ!」

て「すごいな、お前(笑・ホントかなぁ?)

  …で、どこが一番面白かった?」

子「ヤサコがイサコに、何度も何度も、
  諦めないで呼びかけ続けるとこ。
  感動したよ!」


 うっかり滝漏れるとこでした(笑)。ああ、なんだよ、オッサンが多少恥ずかしい思いをしていても、ちゃんとメインターゲットには伝わっているんじゃん!って。この瞬間、この作品がジュブナイルであることを思い出し、そしてそれのみならず、この作品は正しく少年少女たちへ送るエールになっているんだなぁって確信したんです。そう、初恋と聞いてちょっと顔を赤らめちゃうような、ヤサコやハラケンと同じ年頃の子どもたちに送られた、長い長い道を行くためのエールなんですよ。

~~~

 後日談的なカットで、ヤサコへ電話をするマユミの姿や、失踪したらしい宗助を探そうと言うタケルのメールなどが描かれ、本筋以外の部分も「道は続いてく」ことが示されました。十分ではないけれど、今はそれでいいのでしょう。そして、ヤサコが中学校に、キョウコが小学校に上がったことを示すラストシーンで、突然かかってきた電話のイサコが、ヤサコにこう告げます。

「私はイサコ。
 名付け親はアンタだ」

 「お兄ちゃん」が名づけてくれたその名を他人から呼ばれることを嫌っていたかつてのイサコは、「外とのリンクを拒絶し、内部へ向かう者」でした。しかし今は外に向かってその名前を開放し、またその名の由来も「兄」ではなく「真実の意味を引き出してくれたヤサコである」と言い切るほど、吹っ切れていることがわかります。それでも、また迷ってしまうことがあるのかもしれませんが…その時には、またヤサコとのつながりが彼女を助けてくれるに違いありません。

 そんな、心温まるやり取りに、こちらもすっかり安心していたんですが…最後の最後に、またやられちゃいました。ヤサコとの電話が終わった後に、気配を感じてヤサコが見た道の先に、何とデンスケの姿が。


 ぶわっ!(←決壊)


 めっ、メガネ!かけてないのに!ヤサコもキョウコも!電脳メガネ、額に、だって、えっ、ああ、ああああああああああ!!!


 白昼夢でもなく、幻でもなく。正しく道を進んでこれたヤサコたち、「手では触れられないけれども本当」というものがわかっているヤサコたちには、今も「本当のもの」であるデンスケがちゃんと見える、と。そういう暗示ですよね、これ。しかも、「道は続いてく、繋がっている」…ED曲「空の欠片」の最後の部分を、歌抜きでバッチリ重ねてきたこの演出はひょっとして、「耳には聞こえなくてもその歌詞がちゃんと伝わる」という、音楽面でのフォローじゃないですか。


 もうっ!極上、としかっ!!(感涙)


 ありがとう、ありがとう、本当にありがとう。この作品に携わった全ての方々に、限りない感謝を。これからもDVDが届くたびに繰り返し、子どもたちと一緒にこの作品を愛で続けてまいりたいと思います。続いていく道の意味を、目に惑わされない本物の意味を、かみしめながら。
楽しんで頂けましたらWEB拍手をお願いします。
■関連記事~
 リトルバスターズ!アニメ化決定! (2012/04/01)
 リトバス24話&たまこま11話のレビューは遅れます。 (2013/03/24)
 フルメタル・パニック!を4話まで見た (2005/06/21)
 ハルヒちゃん第二十五わ&ちゅるやさんそのじゅうさんっ (2009/05/09)
 今こそ立てよナユキスト諸君!! (2009/08/07)
 オーズ 第21話「バッタと親子と正義の味方」 (2011/02/12)
 Re:キューティーハニー 人の巻 (2007/11/03)

テーマ:電脳コイル - ジャンル:アニメ・コミック

コメント
この記事へのコメント
ありがとうございました!
ありがとうございました。
毎回感想を楽しませて頂きました。
自分ではもやもやして言葉にできないでいた、作品の素晴らしさを、作品に込められた願いの奥を、読みといて示してくれてありがとうございました。
人の感想や考察を読んで終ってしまった作品にまた涙を流せたのは初めてです。
ありがとうございました。
あなたの感想は、既にひとつの作品です。
これからも、良い感想を、書き続けていってくださいね。
あなたの感想のお陰で、電脳コイルが倍好きになりました。
本当にありがとうございました。
2007/12/10(月) 21:11:16 | URL | てんもん #-[ 編集]
こちらこそ、ありがとうございます・2
>てんもんさん

勿体ないお言葉の数々、こちらこそお礼申し上げたいです。

機会があったら、そのうち記事にしようかとも思っているんですが、好きになった作品への私のレビューって、どんどん「公開ファンレター」みたいになってくんですよ。いや、「ファンレター」じゃ生ぬるくて、「ラブレター」かもしれんです。どれだけあなたのことが好きか、あなたのどこに惹かれたのか、今どんな気持ちであなたを見ているのか…その気持ちに賛同していただける方と、同じ思いを共有できるなんて、この上なく幸せじゃありません?うんうん、素敵だよねーって、涙流しながら頷きあって…あれ?ちょっときもいかな?(^^;;

少々やりすぎのところまで掘り進めてしまうきらいのある私のレビューなので、「共感した」って言っていただけることでものすごく救われますし、書いて良かったとも思うんです。いただいたコメントを胸に、また素晴らしい作品への自分の気持ちを、ネットの世界へ返していくことができますから。

重ねて、お礼申し上げます。ありがとうございました。
2007/12/10(月) 22:27:11 | URL | てりぃ #O8jQI81I[ 編集]
楽しませて頂きました
「あー、ずっと見続けて来てほんとに良かったよぅ…」
というのが最終話見終わっての感想です。
スタッフにお疲れ様。そして管理人様、楽しい感想をありがとうございました。
2007/12/10(月) 23:11:26 | URL | zianola #-[ 編集]
今更ですが・・・・(w
この歳で、たまにジュブナイルに触れると、気恥ずかしさや心の痛みと共に、また新しい発見があったりするもんです。
ちょっと前の「時かけ」だったり、今回の「電脳」だったり。
何時までも少年の心を持ち続けていようと思っていたのですが、実は内面がガキの只のおやぢに成り下がっていた自分に気付いたり(爆


 大人と子供の視点の違い。

実はちょっと心配していたのが、世界観が理解できるのだろうかということ。
小難しい設定など抜きにしても、子供たちに感動を与えられたなら、それは素晴しい作品です。
2007/12/11(火) 01:56:58 | URL | ごす #ilk/GieM[ 編集]
恥ずかしがり屋さん
>ごすちん

ごすちんらしからぬとも、実にらしいとも言える可愛らしいコメント、ありがとうございます。

大人と子どもの視点の違いは、どうしようもなく存在するのだと思います。でも、「どちらから見ても面白い」という作品も、世の中には存在するのですね。仰る通り、それは素晴らしい作品なのだと私も思います。

「内面がガキの只のおやぢ」なのは、私自身がそうですし、案外みんなそんなものかもしれませんよ?そう思っておきましょうや(笑)。
2007/12/13(木) 22:02:03 | URL | てりぃ #O8jQI81I[ 編集]
コメントを投稿する
※コメントについてのポリシーはこちらです。初めての方はご一読下さい。
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
※トラックバックについてのポリシーはこちらです。初めての方はご一読下さい。
http://terry.blog1.fc2.com/tb.php/1803-662d9809
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
「ヤサコとイサコ」 最終回でした~ う~ん、ちょっと惜しいというか物足りないとい
2007/12/10(月) 08:21:59 | Brilliant Corners
「見失っても、必ず道はどこかにある」 「人は、細い道で繋がっている・・・時々見失うけど」 「でも、きっと繋がっている」 ヤサコのキスとイサコの嫉妬で生まれたミチコさん、 イサコを甘い言葉で迷い込ませようとするが、ヤサコの叫びで現実へと導く。 見失いか...
2007/12/10(月) 21:00:52 | よう来なさった!
[アニメ 電脳コイル 第26話「ヤサコとイサコ」<最終回>] 優子と勇子からヤサコとイサコまで。 ここが終着点でもあり、始まりでもある。 そんな二人の関係がどんな結末で描かれ...
2007/12/10(月) 22:30:35 | 王様の耳はロバの耳 [delta]
電脳コイル「ヤサコとイサコ」です。 さて、ここまで本当にすばらしい出来だった電脳コイルですが、最終回も見事に着地してみせるのでしょうか。先週までの進展からすると、結構苦しそうで余韻を残すようなラストにできるか微妙な感じですが。 ということで、電脳コ...
2007/12/10(月) 22:49:27 | 藍麦のああなんだかなぁ
こちらは感想です。内容は前半・後半。思いついたままに書き連ねます。落ち着いたらまとめたいと思います。まだ訂正・追記するかもしれません。4423はイサコの患者ナンバー。そしてイサコの病室。兄の死を知らされたショックで心を閉ざしたイサコの治療のため設置された実...
2007/12/11(火) 10:15:55 | からまつそう
■電脳コイル■ これこそ、本当に良い最終話でした  >> 「電脳コイル 第26話」 の続きを読む 始まった当初は、作画が個人的に好きじゃなく見てなかったのが 気が付いたら毎...
2007/12/11(火) 20:47:59 | King Of ヘタレ日記
★★★★★★★★★☆(9) いつでも どんな時も 道は続いている 繋がっている まさかの百合END来たー!!(マテ いやいや、心配してたけどとても綺麗な終わり方だったと思い...
2007/12/12(水) 09:47:38 | サボテンロボット