Old Dancer's BLOG
ここはてりぃが、趣味の共通する方々との得がたいつながりのために、自分の趣味に関係する諸々のことを、壊れながら書きつづるブログです。
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電脳コイル 第25話「金沢市はざま交差点」
 …な。


 なんという不快な…。


 素のままぶつけられる汚れた言葉、正当性を持ったかのように高らかに宣言される復讐、利己的な目的や存在意義のために利用される少女の無垢な心、その結果として崩壊していく「大切な世界」……。


 でも、これが、人が誰しも生きていく上で何度も向き合わねばならない、「憎しみ」というものなのだとしたら。そして、そこに、「今度こそ逃げ出すまい」として立ち向かう少女がいるのだとしたら。


 見ている僕らが逃げ出してどうする!いかなる結末が待ち構えていようとも、最後までかぶりついていこうじゃないか!運命に翻弄される二人の「ユウコ」に、最後の望みを託して。
 
 行間を読まねばならない箇所は少なからずありましたが、「少年少女の視聴者は読まなくてもよいように」「大人の視聴者には読もうと思えばわかるように」という風に苦心された配置がなされていて、一気に見てよし、何度も繰り返して見てよしという、多面的な回となっていたように思います。

 パッと見に派手で子どもでもわかる部分としては、まさかのこのタイミングまで取ってあったと思われる隠し玉、「飛行するサッチー」の絡んだバトルに拳を握りっぱなしでした。まだこんなものが取ってあったなんて!やや悲壮感に彩られる中での飛行シーンは手放しでは喜べないところはありますが…でも、夢ですよね、ああやって、自分に翼が生えたかのように飛ぶ体験って。

 そうして、最早お家芸と呼んでも差し支えなさそうな、「慣れ」というものと無縁のような激しいバトル、空中戦。第一話で「子どもたちの敵」として登場したサッチーが、今回最後の最後までヤサコを守りぬき、2.0を道連れにして轟沈する様は、一言で言い表せないカタルシスを与えてくれます。宮崎駿作品に出てくるラムダとか、あの辺へのオマージュも入っている感じでしょうか…。

 子ども視点で見ると、この「サッチー」のような存在は、まるで「親」のようにも思えます。自分のやんちゃには手厳しいバツを与えもしますが、迫る脅威からは身を包んで自分を守ってくれたり、自力では無理な飛行を実現して空からの世界を見せてくれたり、しかし最後には脅威を遠ざけるために犠牲となることも厭わない…。犠牲となったサッチーを目で追いながら、そこに涙を見せることも無く次へ進もうとするヤサコは、ちょっと拍子抜けに見る向きもありそうですが、親たる自分の心境を重ね合わせると、「それでいい、それでいいんだ、前へ進め、ヤサコ」という風に思えてくるから不思議です。


~~~


 一方、ちょっと小さなお友だちには難しそうな「謎解き」の部分でしたが…これまた、衝撃的な事実が色々と。


 「4423」を名乗っていた、コイルドメインのあの少年は、「天沢信彦」ではなく、ひょっとしてイサコ自身が作り出したものだったのか?…とか。


 猫目の父は電脳メガネを開発した研究者であり、その名誉回復と病気の母の治療のために猫目は全てを犠牲にしようとしている…とか。


 ヌルキャリアーという本来の存在の意義と、電脳コイル現象との関係、そして猫目が狙う「コイルドメイン」の維持の理由…とか。


 これらをつなぎ合わせていくことは、確かにワクワクしますし、燃えもします。ですが…今回のストーリーは、きっとそれのみを描こうとしたものではないのです。言葉ではほとんど語られないけれど、重要なモチーフとして出てきているのが、人の抱えてしまう「憎しみ」という感情ではないでしょうか。




 先週の引きでいきなり登場し、予想に反して今回冒頭のみであっさり去ってしまったヤサコの旧友・マユミは、ヤサコの過去に少しだけ触れ、そこにちょっとだけ恨み言を言って、ヤサコを突き放していきました。しかしあれだけでは、ヤサコが全く悪い、という風にも思えませんし、集団の中での「どうしようもない出来事」だったような気もします。それでも、マユミはヤサコに嫌悪を抱きましたし、恐らく苦しみもしたのでしょう。ヤサコ本人が悪意を持たなくとも、実際に犠牲は出たのだし、その結果憎しみも生まれたのです。

 また、ムスカもかくやという具合に悪者路線一直線の猫目宗助は、大きな悪意に晒されて徹底的に貶められた挙句に、自分自身が大いなる悪意となって世界に災厄をもたらそうとしていました。他の悪意によって、増殖してしまう悪意。自らの運命に反旗を翻すことが、更に大きな悪意となってしまう、この世界の矛盾。猫目を糾弾することは簡単ですが、自分は彼のようにならないと、断言できる人が一体どれくらいいるでしょうか?

 そうして、猫目の目的と結託し、自らの存在意義を見出して「悪意」を保とうとする電脳的な存在・ミチコ。イサコの弱い部分を突きながら、彼女をそそのかし、ヤサコを憎むように仕向けるミチコは…見ようによっては、「自らの存在意義」を求めているだけのようにも思えます。果たしてミチコの存在が純然たる「悪」であるかと言えば…そこにはっきりと答えることが出来るでしょうか。

 数々の憎悪、良きものを貶めていく悪意。それは、必ずしも、「明らかな悪というもの」から発生したものではないのです。それは、誰からも生じうる、どこにでもあり得るものなのでは?



 そうした悪意に、どう対応すべきか。答えは一筋縄では得られませんが、その一つの可能性として、この回に登場する「悪意に立ち向かう人々」は、誰一人として対抗する「悪意」をぶつけてはいないのですよ。元々「プログラム」であるサッチーはもちろんですが、その操作をしていたタマコもハラケンも、襲い掛かる2.0やそのバックにいるものには一切の憎悪をぶつけず、ただただひたすらにヤサコの身を案じて行動していましたよね。

 そして、主人公のヤサコに至っては…必ずしも100%正しいとは言い切れないマユミの言葉を真正面から受け止め、コイルドメインにあっても追っ手に対して大きく敵意をぶつけることなく、あの鳥居の階段でさえ「イサコを助けたい」の一心のみで行動しているんです。そこには「悪意」ではなく「善意」があるのみです。かつて自分の「消極的な善意」がマユミを不幸にしたことを教訓にしてか、今は「積極的な善意」で前に進もうとするヤサコが眩しいです。彼女の善意は、今度は悪意を昇華するところまで到達できるのでしょうか。



 細い、細い、イサコとヤサコをつなぐ道。でも、そのリンクは、まだ完全に途切れたわけではなさそうです。第3話のサブタイを飾った「優子と勇子」という表面的な関係が、真の関係として語られることを思わせる「ヤサコとイサコ」という最終回のサブタイには震えを禁じえません。ここまで拡げられた問題が、どこまで解決されるのか、一体誰までが救いを得られるのか。大団円を期待しつつも、まっさらな気持ちで最後のときを迎えたく思います。
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2007/11/25(日) 03:36:58 | Powerd BYエコール・ド・サンファル
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